武楽とは

武楽とは「武の美」をテーマに、様々な武藝を見せる舞、パフォーマンスと、琵琶や鼓、能管(笛)、笙、和太鼓といった伝統的な楽器の演奏とを組み合わせたダイナミックでスタイリッシュな伎芸です。


国技相撲、五輪種目柔道をはじめ、剣術、柔術、空手、合気道、古武術、昨今の格闘技ブームなど、日本を語るに欠かせない武道・武術。

その技、型、間、礼、精神、身体操法に内在する美、そして魂が込められた刀剣・武具・戦装束に見られる晴れの美、用の美、武士の美学…。

「武の美」という切り口から源光士郎が提唱する新しいアートムーブメント「武藝運動」の総合芸術として編成された躍動的な舞と勇壮な奏楽による歌舞劇。

現在、各方面で注目されている「ナンバ」の動きなど、日本の武術と伝統芸能の所作には共通点があります。命を賭して大切なものを護るために磨かれた術理、その本来の意味に立ち返り再構成した伎芸が武楽です。


また、日本古来の武術、伝統楽器のみにとらわれず、中国武術やテコンドー、カポエィラ、そしてXMA(エクストリーム・マーシャルアーツ)といった最新のアクロバティックな武藝や、豪州より伝来した世界最古の管楽器で、精霊と交信するために用いられた韋駄笛(イダキ/ディジュリドゥ)、モンゴルやトゥバ共和国などに伝わる、笛のような声などを特徴とする特殊な一人倍音唱法 喉歌(Throat-Singing/ホーミー/ホーメイ)、そして、小書(特殊演出)によっては映像や光による演出なども取り入れています。

このような日本の伝統的な武術や音楽と、現代の武藝、海外の民族楽器・民族音楽、最先端のアート・テクノロジーなどを融合することで、新しい文化を生み出す可能性を持っていると考えています。

「伝統」と「革新」。

神楽・伎楽・雅楽・舞楽・猿楽・田楽・能楽・文楽・歌舞伎に続く日本の新しい芸能です。

 
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【武楽とは】PV(源光士郎インタビュー

■さまざまな分野で活躍する方々をシブテレ編集部がインタビューする
「People」のコーナーでも、武楽座座長 源光士郎が紹介されています。


武の意義と本質





「武」という字の由来は、「二」「戈」「止」の三つの文字の組み合わせによる「二つの戈(ほこ)を止める」と言う会意文字であるとする説が知られています。

二千年前の書物『春秋左氏伝』には「それ武は功を定め、兵をおさむ。ゆえに戈を止むるを武となす」という楚の荘王の言葉があります。後漢の許慎は『説文解字』の中で「武とは撫(ぶ)なり、止戈(しか)なり。禍乱を鎮撫するなり。禍乱を平定して人道の本(もと)に復せしめ、愛撫統一することが武の本義なり」と説いています。この解釈は、荘王及び許慎の願い、もしくは機智によるところかも知れません。武という文字本来の起源としては賛否ありますが、日本に漢字が伝来する以前に遡るこの解釈が、結果的に日本の武士の発生、武道の精神の形成に影響したことは十分に想像できます。

また、西暦六〇三年に聖徳太子が制定した、我が国最初の成文法である『一七条憲法』には、その第一条に「和を以って貴しとなす」とあります。こちらも意見が分かれますが、和を貴ぶ精神は日本人に根付いています。

柳生新陰流の柳生宗矩(一五七一〜一六四六)は「敵をよせぬ心地」を流儀の根幹としています。山鹿素行(一六二二〜一六八五)は泰平の世における武士の役割を論じ、文武両道をわきまえ、武士がまず世の中の模範とならなければならないとした。「武士道というは死ぬことと見つけたり」の一文で知られる『葉隠』の山本常朝(一六五九〜一七一九)は、武士にとって最も大事なことは死の覚悟と説いています。覚悟とは悟りを覚えると書きます。死を覚悟したとき、人生の小事は削ぎ落とされ、真の大義を知ると私は考えます。元禄から享保にかけて活躍した軍学者、大道寺友山(一六三九〜一七三〇)は『武道初心集』に「義」こそ武士道の本質あるいは中核をなすものであると論じています。

『武士道』を世界に紹介した新渡戸稲造は、武士道とは武士が守るべき道徳的徳目の作法とし、格言「負けるが勝ち」「血を見ない勝利こそ最善の勝利」を示して、武人の究極の理想は平和であると書いています。

現代にも馴染み深いところでは、近代柔道創始者、嘉納治五郎の言葉に「自他共栄」とあります。極真空手・大山倍達は「力なき正義は無能なり。正義なき力は暴力なり」と言っています。また、少林寺拳法開祖・宗道臣は「武道の本質は、修行鍛錬する事を通じて精神と肉体と健全なる自己を確立すると共に、社会的にも積極的に不正や悪と戦ってゆける勇気と行動力を持った人間を作って行く『人づくり』の大道です」としています。

私たち武楽座でも、「武」の本義は争いを止め、平和を守る事と捉え、真の武士は「和」のために闘うものと定義しています。


 
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